「メガネ越し、傍目八目(おかめはちもく)、右も左もぶっ飛ばせ!」


            
             ONと一緒に過ごした子供達 


             
             
             ミスターG 栄光の背番号 3


これも同じぐらいの時代の話です。相手のチームは中日。
9回裏、2死、ランナーを置いてバッター長島。
ツーストライクに追い込まれ、ピッチャーはインハイへのボールになるつり球




ここで、長島 スイングに入りましたが
思いとどまってかろうじてバットを止めたか・・・・
に見えたが、審判のコールは「ストライク、バッターアウト!」




ふつう、ここで判定に不服があれば、審判に詰め寄り、
振ってないと文句の一つもつけるところですが、
ゲームのエンディングにミスターは
そんな無粋なまねをする男ではありませんでした。
そのバットを止めたフォームのままの姿で審判に
「振ったか?!振ったか?!振ったか?!」
と、叫びました。



すると、そうこられた審判ものっちゃって、
ミスターに向かってコールのしぐさをしながら、
「振った!振った!振った!」
するとミスターはバットを止めたフォームのまま、
「振ったかぁ〜!」と、大きく叫んだとたん、
くるっときびすを返してベンチへ去ってゆく。
そしてゲームセット。その後姿には、背番号3。
歌舞伎なら、「長島ぁ〜!」と声が飛びそうな、
まさしく千両役者でした。




しかし三振って、フルスイングの三振ならかっこよく見える時もあるけど、
最も嫌われるハーフスイングで、しかもゲームセットなのに、
こんなに絵になる三振、いまだかつて見たことありません。




そういえばミスターの引退の日のスポーツ新聞で、
作家の寺内大吉さんが
「鉄人 王貞治の打席には神聖、侵すべからずの厳しさがある。
だが、長島は違った。彼が三振してしりもちをつくと、
観客はそのバッターボックスに入って
彼と一緒になって笑った」と、書いておられました。




長嶋茂雄。この国民にとっての「戦後の太陽」は、
まさしく 敗戦に打ちひしがれた人々に神様がくれた、
かけがえのないプレゼントだったのです。