「メガネ越し、傍目八目(おかめはちもく)、右も左もぶっとばせ!」



喜味こいしさんが、亡くなられました。
また上方の昭和がひとつ消えちゃいましたね。



兄の夢路いとしさんとのコンビはまさに戦後の上方漫才の歴史そのものでした。
「僕」「君」でやりとりされる話芸は、まさに上品そのもの。
けっして大げさな動作や、声をはり上げるでもなく、まったくの日常会話。
客をいじるなどもってのほかの正統派漫才でした。



また、ご兄弟揃ってのその人柄のよさゆえに、後輩芸人から慕われておられたようで
上岡竜太郎さんが「パペポ」などでしきりにおふたりのことを熱く語っておられました。



一度、いとしさんご存命のころにテレビで
「このごろの若い子の漫才見てると、つっこみのところで「なんでやね〜ん!!」
と大きい声でつっこんでるけど、なんで普通の会話のように
「なんでやねん」とゆえへんにゃろなぁ」と首を傾げておられたことがありました。



まさしくそのとうりで、強ければ強い程、日常から話がかけ離れて
客との距離も比例して離れてしまい、つまらなくなってしまいます。



歌といっしょで、やたら声量の大きさや巧さを見せようとする歌手、いますよね。
そうではなくて、普通に歌って気持ちを表せる人の歌を聞きたい。
それが本当のプロの歌い手とおもいます。
いとこいさんの漫才はまさにそんな漫才でした。



今頃天国で、いとしさんや香川登志緒さんと尽きない話をされておられるでしょう。
安らかにお休み下さい。    続く