「メガネ越し、傍目八目(おかめはちもく)、右も左もぶっとばせ!」




さて、前に父親の死去にともない
私にはやらなければならない事があると書きました。
それは借用証を作らなければならないということです。
父親に宛てて・・・・。




今から26年前オーグリーの開店を決意した私は父に相談しました。
勿論,自己資金なんてあるわけないし,父親が出してくれるわけでもありません。
ただ,私の話を聞いてその真剣さと方向性に間違いはないと判断した父親は
「よし、お前は開店準備に取りかかれ。
資金は俺が国金(国民金融公庫)に話しをつけてやる」




開店準備は進み、父親のおかげで資金の一千三百万も用意が出来
決意から8ヵ月後にオーグリーは船出となりました。
それから10年、国金に借りたその一千三百万を、死に物狂いで返しました。
借りた当時はまだバブルの真っただ中。金利も7・5ぐらいやったかな。
爪に火をともす思いで苦節10年、ついに完済の日を迎える事に。




最後の手続きの為に国金に赴いた私に国金の職員さんは
「おめでとうございます。本日で完済でございます。
また、今後とも当公庫をご利用いただけたらと・・・・」
お礼の言葉が続き、私も「こちらこそ・・・」と、返事をしておりました。




するとその職員さんは「ほんとに一千八百万、ご苦労様でした」
「え?私がお借りしたのは一千三百万でして・・」
「いえいえ、ホレこの通りご覧ください。ちゃんと一千八百万と・・・・」
書類は保証人である父親が保管していて、今日見るのが初めての私。
確かに一千八百万と記載が・・・




家へ帰るなり、「親父!!!」
父親は私を見るなり満面の笑顔で「返せてよかったなぁ〜」
差額の5百万は,遥か昔に先斗町の石畳にしみこんでいたのです。
しかもたっぷりの利息とともに・・・・


今度、納骨です。
私は父親がお盆に帰って来るたびに、心から反省するように
骨壺の中に5百万円の借用書を入れるつもりです。
勿論、二十五年分の利息も付けて!
出てこい親父!金返せ!      続く