オーナー日記

 

          伝説となった12月29日 

 

 

 

アーモンドアイにとってこのレースのすべては、スタートだった。

内が悪い。マスコミからそんな声が聞こえだした時

けっして得意ではない スタートを決めれば

ルメールは 彼女を外にエスコートすると 私は思っていた。

 

 

 

そして 幸運なことに 17頭の中で最もいいスタートを切った彼女は

徐々に 進路を馬場の真ん中寄りに・・・・・・・取らなかった。

 

 

 

ルメールは5番手の好位置を 馬場の内側で我慢させた。

せざるを得なかったのではなく、ルメールは あえてしなかった。

前に馬をおいて壁にして、落ち着いて走らせる作戦を選んだのだ。

 

 

 

この瞬間、日本競馬が生んだ 史上最強牝馬

伝説となって後世まで語り継がれることになる。

 

 

 

直線で、馬場の真ん中に進路を取った彼女が 

10馬身以上も前を行くキセキをとらえ

追いすがる無敗の三冠馬二頭を従えて ゴール版を通過した瞬間

私の頭の中で、玉手箱が開いた。

1977年の12月から、43年ぶりに開いたのだ。

 

 

 

 

競馬というものは ギャンブルともうひとつ

スポーツという側面があることに気付かされた瞬間に開いた あの玉手箱だ。

夕日に照らされた2頭の名馬が スタートからゴールまで

馬体を合わせて一騎打ちを演じた あの日に以来に開いたのだ。

 

 

21歳の時に感じた香りが 還暦を超えた胸にひろがった。

正しさと すがすがしいあの香りが 懐かしさに包まれながら

いっぱいに ひろがった。

11月29日 私の宝物がひとつふえた。