「おかめ はちもく 右も左もぶっとばせ」



リオ五輪も陸上が始まり、いよいよ佳境に入ってきました。
各種目で熱戦が繰り広げられて、
まさに地球規模のお祭りですね。





内村選手の逆転金メダルのあとの取材で
失礼な質問がされた時に
最後の最後で逆転をくらっつたウクライナの選手が
その記者に向かって 色をなしてたしなめるたような素敵な話から
始まる前にロシアのドーピング問題や
柔道のエジプトの選手が、イスラエルの選手と試合後に
礼と握手を拒否したような重苦しい話まで
光と影が見え隠れする大会でもあります。





それについて、ふと思い出したことがありました。
いまから四十二年前
私が小学校二年生の時の東京オリンピック
柔道無差別級のファイナルの出来事でした。





東京オリンピックで初めて行われた柔道は
もちろん本家日本が全階級制覇を義務付けられたようなもので
とくに無差別級は、負けることが許されない階級でした。





が、そこへ立ちはだかったのは
オランダの世界王者アントン ヘーシンクでした。
勝戦で日本人選手が押さえ込みに入られ、「一本!」の声がかかった瞬間
日本の柔道関係者は目の前の敗北に嗚咽をもらし
涙を流し始めました。
ところが本当の意味での敗北は、その後に待っていたのです。





勝負が決まった時、大喜びしたオランダの柔道関係者が
畳の上へ駆けあがろうとしたのです。
そのときヘーシンクは、鬼のような形相でその男を追い帰しました。
まだ「礼」が終わっていなかったのです。





柔道が日本のものから世界のものに変化した瞬間でした。
王者ヘーシンクは日本に敗北をもたらしたのと同時に
その尊厳を守ることで、日本柔道を救ったのです。





スポーツには色々暗い話題もつきものですが
この様な話があるから人は
スポーツから離れられないのだとの思いを
テレビを見ながら考えていました。