オーナー日記
赤木君が 初めて店に訪ねてきてくれたのは
オープンして四年たった千九百九十年
五月の五日 こどもの日でした。
いかにも「物」が好きで、こだわって買い物を楽しむタイプの青年でした。
話を聞くと働きながら、立命の2部に通ってますとのこと。
なるほどと思えるほんとに、生真面目な青年でした。
店に通ってくれるうちに「ひとしさん ひとしさん」
と親しみを込めて呼んでくれました。
郷里は岡山で、お盆の帰省のときに私に
「ひとしさん、僕はね いつも岡山に帰るときはね
鈍行列車に乗って帰るんですよ。網干で乗り換えて
また鈍行で帰るんです。なぜだか 分かりますか?」
わたしが どうして?と聞くと
「文庫本を一冊 買って乗るんです。
家に着くころに、丁度読み終えるんです。楽しいですよ」
元国鉄マンの彼は、屈託のない笑顔で 私に語りかけてくれました。
自分が帰ることを心待ちにしてる、故郷に思いをはせながら・・・・・
続く。